展示構成

第1章

最初日本人 ―ゲノムから見た旧石器時代の人々

ホモ・サピエンスはおよそ4万年前に日本列島に到達しました。この「最初の日本人」の姿は謎に包まれていましたが、近年、沖縄県の石垣島で2万7000年前の人骨が発見されました。国立科学博物館では、古代ゲノム解析でノーベル賞を受賞したスバンテ・ペーボ博士のグループと共同で研究を進めており、この章では、その成果を紹介します。

ノーベル賞受賞者も研究 ゲノム解析が進む“最古の日本人” 見えてきた古代人と現代人の繋がりとは?

白保竿根田原洞穴遺跡4号人骨

白保竿根田原洞穴遺跡4号人骨
旧石器時代
沖縄県白保竿根田原洞穴遺跡
沖縄県立埋蔵文化財センター蔵

復顔

復顔
国立科学博物館蔵

第2章

日本の基層集団 ―縄文時代の人と社会

縄文時代は、日本列島域で土器が出現したおよそ1万6000年前から、九州北部で水田稲作が登場した2900年程前まで続きました。近年、人骨に残されたDNAの解析技術が飛躍的に向上し、縄文人の実体が明らかにされつつあります。この章では、縄文人と彼らの社会や精神文化について紹介します。

各地の縄文人がどのようにくらしていたのか?
出土した人骨に含まれる炭素や窒素の割合などから、何を食べていたのか分かるのです!

海岸部の縄文人(里浜貝塚98-1号人骨)

海岸部の縄文人(里浜貝塚98-1号人骨)
縄文晩期、3200年前
宮城県里浜貝塚
奥松島縄文村歴史資料館蔵

山間部の縄文人(栃原岩陰遺跡KA-1号人骨)

山間部の縄文人(栃原岩陰遺跡KA-1号人骨)
縄文早期、1万年前
長野県栃原岩陰遺跡
国立科学博物館蔵

クマの首には月の模様が!
ぜひ会場で確かめてみてください!

縄文時代の遺跡から出土したかわいい土偶や土製品もたくさん登場!
自然の恵みや生命の循環、再生の願いが込められています。

縄文時代の遺跡から出土したかわいい土偶や土製品もたくさん登場!
自然の恵みや生命の循環、再生の願いが込められています。

クマの首には月の模様が!ぜひ会場で確かめてみてください!

クマ形土製品

クマ形土製品
縄文晩期、2400年前
岩手県上杉沢遺跡
二戸市文化財埋蔵センター蔵
※展示は複製品(国立歴史民俗博物館蔵)

イノシシ(ウリボウ)形土製品

イノシシ(ウリボウ)形土製品
縄文晩期、3000年前
北海道日ノ浜遺跡
市立函館博物館蔵
※展示は複製品(国立歴史民俗博物館蔵)

シャチ形土製品

シャチ形土製品
縄文中期、5000年前
北海道桔梗2遺跡
函館市教育委員会蔵
※展示は複製品(国立歴史民俗博物館蔵)

サル形土製品

サル形土製品
縄文後期、3500年前
埼玉県真福寺貝塚
東京国立博物館蔵
※展示は複製品(国立歴史民俗博物館蔵)

第3章

日本人の源流 ―さまざまな弥生人とその社会

水田稲作が始まった弥生時代は、縄文人とは見た目だけでなく、DNAや考え方が異なる朝鮮半島青銅器文化人の登場で幕を開けます。そして 1000年あまりで現代日本人のDNAがほとんど出そろったこともわかりました。この章では、弥生人のDNAにまつわる話を紹介します。

水田稲作、武器や戦い、新たな疾病などが登場した弥生時代。
実は日本の歴史の中で最も遺伝的に多様な人々がともにくらした時代でした。

青谷上寺地遺跡8号人骨(男性)

青谷上寺地遺跡8号人骨(男性)
弥生後期、2世紀
鳥取県青谷上寺地遺跡

復顔(青谷上寺朗)

復顔(青谷上寺朗)
鳥取県立青谷かみじち史跡公園蔵

彼らはどのように暮らし、交流していたのか…出土した土器や道具類も必見です!

現状でもっとも古い渡来系弥生人が使った朝鮮半島系の甕

現状でもっとも古い渡来系弥生人が使った朝鮮半島系の甕
弥生時代前期(紀元前7世紀)
福岡県比恵遺跡
福岡市埋蔵文化財センター蔵

第4章

国家形成期日本 ―古墳時代を生きた人々

古墳時代に入るとヤマト政権が誕生し、国家成立へ向けて社会が動き出します。日本列島 にやってきた渡来人が須恵器生産・鉄器生産・馬の飼育などの技術を伝え、国づくりを支えました。古墳時代の人々のゲノムは現代の日本人に近いことが分かっていますが、一方で縄文系のDNAを色濃く残す人々もおり、古墳時代人と言っても多様なDNAを持つ人々の集合だったのです。

同じ古墳に埋葬されていた人骨たちをDNA分析してみると…!?

久米三成4号墳第1主体第1号人骨(熟年男性)

久米三成4号墳第1主体第1号人骨(熟年男性)
古墳前期、4世紀
岡山県久米三成4号墳
岡山理科大学蔵

日本列島に馬がやって来たのは実は古墳時代以降なんです!

茶山2号墳馬形埴輪

茶山2号墳馬形埴輪
古墳中期、5世紀
大阪府茶山2号墳
羽曳野市教育委員会蔵

トピック1

イヌのきた道

最古のイヌの系統は約1万年前の縄文時代に日本列島に渡来し、7000年間他のイヌと混ざらず系統を維持しました。弥生時代が始まり、ヒトの移動とともに異なる系統のイヌも渡来して在来のイヌと混ざりました。このようなイヌの移動と混血の歴史をDNAから解き明かします。本章で展示する骨のほとんどはDNA解析をしています。

1万年前から日本人のパートナー!
DNA分析をもとに復元した縄文時代と
弥生時代のイヌの模型も初展示されます。

弥生時代のイヌの頭骨

弥生時代のイヌの頭骨
弥生後期~古墳前期初頭
鳥取県青谷上寺地遺跡
鳥取県立青谷かみじち史跡公園蔵

清川村の民家で大切に保存されていた貴重なニホンオオカミ頭骨

ニホンオオカミの頭骨

ニホンオオカミの頭骨
江戸~明治時代
神奈川県清川村
個人蔵

トピック2

イエネコの歴史

イエネコはイヌと同様に人と関わりが深い動物です。日本には稲作の伝来が始まった弥生時代に持ち込まれたという説がありますが、近年のDNAを用いた分析では、現代の日本猫の多くが平安時代前後に持ち込まれたネコを祖先とすることが分かってきています。イエネコと日本人の関わりに最新のDNA研究で迫ります。

古墳時代の土器についたネコ?の足跡

動物足跡付須恵器

動物足跡付須恵器
古墳時代終末期、6世紀末~7世紀初頭
兵庫県見野6号墳
姫路市教育委員会蔵

イエネコのご先祖様も!

リビアヤマネコの剥製

リビアヤマネコの剥製
ねこの博物館蔵

第5章

南の島の人々―琉球列島集団の形成史

歴史的に「南島」と呼ばれる琉球列島は亜熱帯、黒潮、サンゴ礁が特徴です。新石器時代には自然を生かした南島型の縄文文化が花開きました。弥生時代に福岡平野の弥生人が南島特産の大型巻貝の腕輪を作り始め、九州・沖縄間に貝殻を交易する海上ルートが誕生します。1000年にわたる海上往来は人々のDNAにどう影響したのでしょうか。

大型の貝殻を磨いてつくった腕輪をはめていた南島人の人骨や、交易品が集います!

北上する南島人(大池B遺跡1号人骨)

北上する南島人(大池B遺跡1号人骨)
縄文後期末〜晩期初、3300年前
鹿児島県 宝島 大池B遺跡
国立歴史民俗博物館保管

イモガイ集積とシャコガイ

イモガイ集積とシャコガイ
弥生中期併行
沖縄県木綿原遺跡
世界遺産座喜味城跡ユンタンザミュージアム蔵

第6章

北の大地の人々 ―縄文人がアイヌになるまで

日本列島北部では約2400年前に稲作農耕をしない「続縄文文化」 が誕生したことをきっかけに、本州島以南とは異なる文化的変遷をたどり「アイヌ文化」に至ります。人の成り立ちにおいては、縄文時代から19世紀半ばまで南北双方でわずかに遺伝的交流があるものの、縄文人の形質・遺伝子を色濃く受け継いでいます。本章では出土品を通して、日本列島における人と文化の多様性を紹介します。

北の大地の人々が育んだ独特な文化を紹介!
装飾豊かな続縄文文化の出土品やアイヌの副葬品なども展示されます。

鹿角製モリ6点

鹿角製モリ6点
続縄文前半期、2000年前
北海道礼文華貝塚
伊達市教育委員会蔵

クマ彫刻の匙型製品

クマ彫刻の匙型製品
続縄文前半期、2000年前
北海道有珠モシリ遺跡
文化庁(だて歴史文化ミュージアム保管)
*展示は複製品

エムシ(太刀)

エムシ(太刀)
17世紀
北海道有珠4遺跡
伊達市教育委員会蔵